建設業法の改正(2024年成立)で何が変わった?2025年12月全面施行を現役18年が現場目線で解説【2026年版】

建設業法の改正(2024年成立)で何が変わった?2025年12月全面施行を現役18年が現場目線で解説【2026年版】 しごと

「安く、早く」——建設業界がずっと引きずってきた宿題があります。

無理な値引きと短すぎる工期のしわ寄せは、最後は現場と職人の待遇に回ってきました。現役で18年、その構造を嫌というほど見てきました。

そこにメスを入れるのが、2024年に成立した建設業法 改正です。正式には2024年6月14日に公布され、2025年12月12日に全面施行されました。通称「新・担い手3法」とも呼ばれる、業界の転換点となる大改正です。

とはいえ、「法律が変わった」と言われても、現場では何がどう違ってくるのかが一番知りたいところだと思います。この記事では、改正のポイントを最短で翻訳しつつ、現役の施工管理から見て「現場と契約に実際どう効くのか」までお伝えします。

ニュースの解説だけでは、現場は動きません。だからこそ「自分の仕事にどう関わるか」まで落とし込んでいきます。

2024年に成立した改正建設業法とは(新・担い手3法)

まず、全体像を整理します。

今回の改正は、正式には「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第49号)といいます。長い名前ですが、要は建設業法そのものを見直した法律です。

背景には、資材価格の高騰と深刻な人手不足があります。つまり、安すぎる請負代金と資材高騰のしわ寄せを止め、担い手(=現場で働く人)を確保することが目的です。

施行は一度にではなく、段階的に進みました。スケジュールは次のとおりです。

時期内容
2024年6月14日公布(令和6年法律第49号)
2024年12月13日技術者の専任合理化など一部を先行施行
2025年12月12日労務費の基準・価格転嫁ルールなどを含めて全面施行

ポイントは大きく3つです。①労務費の基準、②価格転嫁のルール、③技術者の働き方の見直し。順番に見ていきます。

> 同じ時期に進んだ働き方改革の全体像は建設業の2024年問題とは?時間外労働の上限規制で現場がどう変わったかでまとめています。あわせて読むと、業界の流れがつかめます。

変わったこと①労務費の基準で「安すぎる」が禁止に

まず一番のインパクトが、労務費の基準です。

これまで、請負代金の中で人件費(労務費)がいくらかは、はっきり見えないままでした。そのため値引き競争のしわ寄せが職人の賃金に及びやすかったのです。

そこで改正では、国の審議会(中央建設業審議会)が「労務費に関する基準」を作成し、勧告する仕組みが新しく作られました。この基準を著しく下回る見積りや契約は、禁止の対象になります。

結論として、「相場より極端に安い労務費で見積もらせる・契約させる」ことが、法律ではっきり違反になったのです。

具体的には、次のような行為が問題になります。

  • 基準を著しく下回る労務費での見積書の作成を求めること
  • そうした安い見積りをもとに契約を結ぶこと
  • 法定福利費や安全衛生経費など、必要な経費を見積りに含めないこと

違反した場合、国土交通大臣による指導・勧告や、悪質なケースでは会社名の公表といった措置がとられます。会社の信用に直結するため、無視できないルールです。

現場目線で言えば、「安値受注の無理」が上流で止まりやすくなる、ということです。予算のしわ寄せで安全対策や人員を削る、という悪循環に歯止めがかかることを期待しています。

変わったこと②資材高騰の「しわ寄せ」を防ぐ価格転嫁ルール

次は、資材高騰への対応です。ここ数年、鉄やコンクリート、木材などの価格が大きく動きました。

これまでは、契約後に資材が値上がりしても、その負担を受注者側(下請けや専門工事業者)がかぶるケースが少なくありませんでした。今回の改正は、この一方的なしわ寄せにブレーキをかけます。

ポイントは「おそれ情報」という考え方です。

受注者は、資材価格の高騰など請負代金や工期に影響を及ぼすおそれがある事象を把握したら、契約を結ぶ前に注文者へ伝えることが求められます。つまり「あとで値上がりするかもしれない」というリスクを、契約前にオープンにする仕組みです。

さらに、資材や労務費が大きく変動したときに契約金額をどう見直すか(いわゆるスライド条項)を、あらかじめ契約書面に明記することも求められます。

> 根拠として使う「おそれ情報」は、思い込みではなく客観的な情報が前提です。公的機関の統計や、資材メーカーの公表資料など、通常の事業活動で把握できる情報を用います。

現場目線では、「材料が上がったのに金額は据え置き」という理不尽が減る方向に働きます。資材高騰の負担を、受注者だけが抱え込まない仕組みへ変わったと理解しておけば十分です。

なお工期についても、2019年の改正ですでに「著しく短い工期での契約の禁止」が導入されています。今回の価格・労務費のルールと合わせて、「安く・早く」の無理をなくす方向がいっそう強まった形です。

変わったこと③技術者の専任が緩和され1人で複数現場を見られる

3つ目は、技術者の働き方に関わる見直しです。ここは現場の配置に直接効いてきます。

これまで、一定規模以上の工事現場には主任技術者などを「専任(その現場に張り付き)」で置く必要がありました。人手不足のなか、この専任義務が現場を回すうえでの重い制約になっていたのです。

改正では、ICT(情報通信技術)の活用などを条件に、1人の技術者が複数の現場を兼任できる特例が設けられました。遠隔で現場を確認できる環境を整えれば、物理的に常駐しなくても管理できる、という考え方です。

兼任が認められる主な条件は次のとおりです。

条件内容
工事の規模各工事の請負代金が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)
現場間の距離現場どうしの移動が1日で可能で、片道おおむね2時間以内
下請の次数各工事現場の下請次数が3次まで
連絡員の配置各現場に実務経験1年以上の連絡員を置く
ICTの活用遠隔で現場状況を確認できる環境を整える

このほか、営業所の専任技術者が一定条件で現場を兼務できる特例も整理されました。

現場目線では、慢性的な技術者不足のなかで人の配置をやりくりしやすくなるのが大きなメリットです。一方で、遠隔でも管理の質を落とさない段取りやICTの整備が前提になる点は、押さえておく必要があります。

現場と会社が今からやっておくべきこと

法律の中身がわかったら、次は「では何をするか」です。現場・会社の立場で、優先度の高いものを挙げます。

  • 見積りの内訳を見直す:労務費や法定福利費、安全衛生経費を明示できているか確認する
  • 契約書面のひな形を更新する:資材変動時の見直し方法(スライド条項)を盛り込む
  • おそれ情報を共有する習慣をつくる:資材動向の情報を、契約前に整理して伝えられるようにする
  • ICT環境を整える:遠隔臨場やクラウドでの現場確認ができる体制を検討する

これらは経営層だけの話ではありません。見積りや契約の実務、現場の記録は、施工管理が日々触れる部分だからです。

> 待遇や工期の適正化は、働きやすい会社を選ぶ視点にも直結します。転職を考えるなら施工管理のホワイト企業の見分け方|7つの特徴と危険なサインもあわせて確認しておくと安心です。

現役18年が見た「この改正が効くかどうか」の本音

ここからは、法律の解説ではなく本音です。

正直に言えば、法律ができたからといって、現場の慣習が一晩で変わるわけではありません。18年やってきて、そう簡単でないことは身にしみています。

ただ、今回の改正は「労務費の基準」という数字の物差しを持ち込んだ点が、これまでと違います。あいまいだった「安すぎる」に基準ができたことで、無理な安値受注に「NO」と言いやすくなったのは、確かな前進だと感じます。

そして技術者の専任緩和は、人手不足に苦しむ現場にとって現実的な助け舟です。うまく使えば、1人が現場に縛られて疲弊する構造を、少しずつ変えていけます。

制度は道具です。使いこなせるかどうかは、現場側の理解にかかっています。だからこそ、まずは「何が変わったのか」を正しく知ることが第一歩になります。

> 業界の待遇や将来性そのものに不安がある人は施工管理は「やめとけ」と言われる7つの理由|現役18年が本音で解説も参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 改正建設業法はいつから施行されていますか?

2024年6月14日に公布され、2025年12月12日に全面施行されました。技術者の専任合理化など一部の規定は、2024年12月13日に先行して施行されています。

Q. 労務費の基準を下回るとどうなりますか?

基準を著しく下回る見積りの作成を求めたり、そうした契約を結んだりすると、法律違反になります。国土交通大臣による指導・勧告のほか、悪質な場合は会社名が公表されることもあります。

Q. 小さな会社や下請けにも関係ありますか?

はい。労務費の基準や価格転嫁のルールは、取引の適正化を目的としているため、規模を問わず関係します。むしろ立場の弱い下請け側にとって、しわ寄せを防ぐ後ろ盾になる改正です。

まとめ

2024年に成立した建設業法 改正(2025年12月全面施行)のポイントを、最後に整理します。

  • 労務費の基準ができ、「安すぎる」見積り・契約が禁止された
  • 資材高騰の「おそれ情報」を契約前に伝え、価格を見直す仕組みが整った
  • ICT活用を条件に、技術者が複数現場を兼任できるようになった

どれも、「安く・早く」のしわ寄せを止め、現場で働く人を守るための改正です。

法律が変わっても、使いこなすのは現場です。まずは自社の見積りと契約のひな形を見直すところから、始めてみてください。制度を味方につければ、現場の働き方は少しずつ、確実に変わっていきます。

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